こんにちは。京都府中京区のきよら矯正歯科 院長/日本矯正歯科学会認定医の清水です。
歯並びを良くする矯正治療には、歯に装置をつけるワイヤー矯正や、
取り外しができるマウスピース型矯正装置などがあります。
今回はそのワイヤー矯正についてお話ししたいと思います。
目次
1. ワイヤー矯正とは
ワイヤー矯正とは主に「ブラケット(マルチブラケット装置)」と「ワイヤー」を使って歯を動かす方法です。
それぞれの歯の表面に歯科用の接着剤で「ブラケット」をつけて、
ブラケットの「スロット」と呼ばれるワイヤーが通るレールのような部分に、
アーチ型のワイヤーを組み込んで、適切な力を歯にかけて、
3次元的に調整し歯並びをキレイにしていきます。


2. ワイヤー矯正のメリット、デメリット
ワイヤー矯正のメリット
- ほぼ全ての難易度の症例に適応
- 1人ひとりの歯並びの状態に合わせて、細かい微調整ができるため、操作性もよく、仕上がりもキレイになる。
- 効率的に歯の移動ができる
- 矯正においては最も歴史が長く、治療方法も普及し、治療効果や理論が成熟している。
- ワイヤー矯正は装置を自分で取り外せないため歯を動かすことでは自己管理が不要(継続して装置を装着している状態)
ワイヤー矯正のデメリット
- 食事やブラッシングがしにくい
- いったん装置をつけると、治療が終わるまでは外さないので、むし歯リスクが高まる
- 表側の矯正装置は種類によっては目立つ
よって、ワイヤー矯正は従来からよく使われる矯正治療の方法で、
今もなおブラケット装置も日々進化し続け、
さまざまな症例における多様性や治療における操作性にはとても優れています。
古くから現在までに装置が生き残っているのは、それなりの理由があるからなのでしょう。
3. ワイヤー矯正の種類
ワイヤー矯正の種類(その1:部位別)
・表側矯正・・矯正装置を歯の外側につける方法
・裏側矯正(舌側矯正)・・矯正装置を歯の内側につける方法
*「ハーフリンガル」と言って、上の歯は裏側矯正、下の歯には表側矯正というものもあります。
表側矯正と裏側矯正(舌側矯正)のメリット、デメリット
表側矯正
【メリット】
- 症例の適応範囲が広い
- 発音はしやすい
- 見えやすいので歯磨きがしやすい
- 目立ちにくい装置を選べる
- 費用負担が他の矯正装置よりは比較的少ない
【デメリット】
- 装置が目立つ
裏側矯正(舌側矯正)
【メリット】
- 矯正装置が目立ちにくい
- 外から物が口にあたった時に、唇に傷がつきにくい
【デメリット】
- 適応症例が狭まる
- 発音がしにくい
- 装置は見えにくいので歯磨きがしずらい
- 舌にスレて口内炎ができやすい
- 矯正装置が外れやすい
- 費用負担が比較的多くなる
- 表側矯正と比べて治療期間が長くなりやすい
ワイヤー矯正の種類(その2:治療範囲)
ワイヤー矯正は動かす歯の範囲によって、全ての歯を動かす全顎矯正と、必要な部分のみ歯を動かす部分矯正(MTM:Minor Tooth Movement)があります。
全顎矯正:歯列全体を動かす矯正方法。全体の噛み合わせに不具合がある場合も対応できる。
部分矯正(MTM):笑ったときに見える前歯の叢生(ガタガタ)のみや、奥歯が抜けてその後ろの歯が傾斜してきたなど、気になる部分を限局的に歯を動かす方法。部分矯正の適応は、部分矯正のみでは噛み合わせが改善できるかをよく検討する必要があります。
4. ワイヤー矯正でも目立ちにくい方法は?
裏側矯正(舌側矯正)では装置は裏側に付くので、基本的には目立ちにくいですが、表側矯正は目立ちやすいため、装置も目立ちにくいものがあります。
目立ちにくいブラケット
・プラッチックやセラミックでできている審美的に目立たないブラケット装置
ギラギラした金属のブラケットを長期間、歯に装着することには抵抗がある方には、プラスチックやセラミックでできている、目立ちにくい透明や白色のブラケットを用いれば、そういった悩みはかなり軽減できます。セラミック製は汚れがつきにくく、着色しにくいので、より目立たせず治療が続けられます。
目立ちにくいワイヤー
・ホワイトワイヤー
通常は、金属のワイヤーを装着しますが、ワイヤーの金属を白色でコーティングしたホワイトワイヤーと組み合わせることでより目立ちにくくします。
白色のワイヤーは歯の色になじむので、人から矯正治療を受けていることが気づかれにくい特長があります。
金属のワイヤーを主に使用する理由は、歯を動かすためにはある程度滑りが良くないと、摩擦力が生じてしまい、歯の動きに影響しやくすなります。これが、治療回数を重ねると、治療期間の長期化につながる場合もあるのです。
ホワイトワイヤーの種類によっては、白色のコーティングが食事や歯ブラシなど外的な衝撃で剥がれてしまい、下地の金属が見えて、マダラ模様になって、かえって見た目が悪くなることがあります。また、剥がれた、部分は摩擦力が大きくなり、歯の移動には不都合もあります。
当院では、ロジウムで特殊なコーティング加工した「ホワイトワイヤー」を使用しています。ロジウムコーティングされたホワイトワイヤーは光の反射で白く見える仕組みになっています。また、治療期間を通じてブラッシング で剥がれたり、食物色素で着色することもありません。
よって、ロジウムコーティングホワイトワイヤーは目立ちにくく、「滑り特性」もよく、「耐久性」に強いワイヤーと言えます。

5. ワイヤー矯正の治療期間
ワイヤー矯正の治療期間は症例の難易度や個人差によって異なるため、
あくまでも目安になりますが、表側矯正の全顎矯正にかかる期間の目安は1~3年程度、
裏側矯正は、表側矯正よりも約2割ほど長くかかるとも言われ、
全顎矯正にかかる期間の目安は2~3年程度と言われています。
しかし、裏側矯正もブラケット装置やワイヤーの進歩によって、表側矯正とあまり治療期間が変わらないとも言われています。
6. ワイヤー矯正の治療の流れ
当院のワイヤー矯正治療では、精密検査を元に歯並びや口元のバランスを考えた治療計画を立てます。またむし歯リスク診断など、矯正治療中のむし歯リスクを下げるための取り組みや定期的な調整時には、磨き残しチェックやプロのクリーニングを行っています。詳細なワイヤー矯正治療の流れはこちらをご参照ください。
1、初診相談
お口の中を拝見し、お口やお顔写真、姿勢の写真撮影、パノラマレントゲン撮影などの簡単な検査を行い、大まかな矯正治療方法と費用リスクなどについてお話しします。
2、精密検査
矯正の治療計画のために、さらに精密な検査を行います。上下の歯型採取、咬合採取、セファロレントゲン撮影(側貌、正貌)、顎関節のレントゲン撮影を行います。
3、診断・治療計画
患者様のお口の中の問題点を分析し、矯正治療中の歯の動き方や、矯正治療後の歯並びや口元のバランスを事前に矯正専用のシミュレーションソフトを使用して治療計画を立てていきます。
4、むし歯リスク検査
矯正治療中は歯磨きも難しくなるため、矯正治療中のむし歯リスクを下げるために、現状のお口の状態を調べます。唾液検査や問診など行い、患者様お一人お一人のむし歯予防プログラムを考えます。事前に、むし歯や歯周病を発見したら、装置の装着前までに治療をしていただきます。
5、矯正装置の装着
矯正装置を装着していきます。注意事項や痛みについて、食生活、ブラッシング指導などをお伝えしていきます。
6、定期的な調整
来院間隔は1~2ヶ月に1回程度。定期的に調整をして、歯並びや噛み合わせをチェックしていきます。また、むし歯予防のために、磨き残しのチェックやクリーニングを行います。口腔筋機能の向上のためのトレーニング(MFT)を行う場合もあります。
7、矯正装置除去・装置除去診断
矯正装置を除去します。その後、資料採得を行い、矯正治療の結果報告を行います。除去後の歯並びの維持を目的に、舌やお口周りの癖の注意点があればトレーニング方法を説明します。
8、保定装置の装着
保定装置(リテーナー)と呼ばれる後戻り防止装置を装着していただきます。リテーナーの状態、噛み合わせの状態を、定期的にチェックしていきます。来院間隔は3~6ヶ月に1回程度です。
9、矯正終了診断
矯正装置を除去して約2年経過したら、資料採得を行い、経過の報告と歯並びの安定性と予後について説明します。
10、メンテナンス
ご希望の方は、噛み合わせやリテーナーのチェック、むし歯のチェック、簡単なクリーニングなどを健診を実施しております。
7. ワイヤー矯正のみでは矯正治療が難しい場合
最も適応範囲が広いとされるワイヤー矯正ですが、次のようなケースではワイヤー矯正単独では対応が難しい時があります。
・重度の骨格のズレが大きい場合
例:上顎前突症、下顎前突症、下顎後退症(小下顎症)、開咬症、上下顎非対称(顎偏位:正面からの上下顎の横ズレ)
・ガミースマイル(笑った時に歯茎の見える量が過度に多い)
など
このように、矯正治療のみでは治療が難しく、顎変形症と診断された場合は、健康保険が適応され、「外科的矯正治療」(外科手術をともなう矯正治療)となります。
8. まとめ
このように、ワイヤー矯正も表側矯正と裏側矯正と種類があり、
それぞれの装置にもメリット・デメリットがあります。
目立たない装置が希望であれば、表側矯正でもさまざまな種類があります。
裏側矯正では適応範囲もあるため、まずはご相談されて、どの方法が良いのか、じっくり聞いてみることが良いと思います。
京都市中京区(二条・烏丸御池)で矯正治療をお考えの方は、きよら矯正歯科にご相談ください。
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記事作成者
きよら矯正歯科 院長/歯科医師・歯学博士清水 啓子
院長紹介:https://kiyora-ortho.com/doctor/
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